6月30日に久保建英選手の壮行セレモニーが行われました。
久保選手の挨拶を聞いて「そうなの!?」と感じたのは「最初はあんまり練習とか行きたくなくて…」というコメントでした。
同世代で日本No.1とか世界レベルと言われ続け、最年少で日本代表に選出されるような選手であったとしても全てが楽しいわけじゃない。
レベルが違っても、他者には想像しにくいストレスが必ず誰にもあるということを改めて認識させされます。
競技志向であればあるほどストレスは多くあります。
ストレスは身体に影響を与えるというのは誰もが知るところですが、多くは、病気に繋がる「悪影響」がフォーカスされます。
人はストレスを感じるとストレスホルモンの値が上昇します。
ストレスホルモンには、下垂体前葉ホルモンである副腎皮質刺激ホルモン、プロラクチン、また、下垂体後葉ホルモンであるバゾプレシン、オキシトシン、副腎皮質から分泌されるコルチゾール、レニン、そして副腎髄質から分泌されるアドレナリン、ノルアドレナリンなどがあります。
これらのいくつかは身体に悪影響を与えるホルモンとして紹介されることが多く、特にコルチゾールの割合が高い場合は、免疫機能の低下やうつ病などの症状が表れる可能性があります。
しかしながら、あまり紹介されないストレスホルモンとしてデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)というのがあり、DHEAの割合が高い場合は、不安症、うつ病、心臓病、神経変性など、ストレスに関するさまざまな病気のリスクが低下することがわかっています。
ストレスって善と悪どちらともの性質を持っているのです。
さらにDHEAは病気のリスクを低下するだけでなく、脳の成長を助ける役目があるということもわかっており、「成長にはストレスが必要」に繋がるところなのです。
コルチゾールもDHEAも副腎皮質から分泌され、コルチゾールに対するDHEAの割合は、ストレス反応の「成長指数」と呼ばれています。
DHEAの割合が高いと、成長指数が高いということになります。以下は研究による結果ですが
・成長指数が高い学生は、粘り強く勉強ができ、GPA(成績平均点)のスコアも高い。
・軍隊のサバイバル訓練では、成長指数が高い人は集中力が高く、問題解決能力に優れていて、訓練終了後も心的外傷後ストレスの症状が表れにくい。
・成長指数が高い人は、苛酷な経験(児童虐待など)からの回復力も高い。
とのこと。
ここで気になるのがコルチゾールよりDHEAを多く分泌させるにはになるのですが、ストレス反応には
・逃走-闘争反応
・チャレンジ反応
・思いやり・絆反応
というものがあり、コルチゾールを多く出してしまうのが逃走-闘争反応で、チャレンジ反応のときはコルチゾールも分泌されますが、DHEAも分泌されます。
また、思いやり・絆反応は社会的ストレスを感じたときに現れるもので、社会的ストレスとは、家族、友人、職場など幅広い対人関係を含む、日常生活でよく生じるストレスです。
社会的ストレスを感じたときに分泌されるのがオキシトシンで、オキシトシンは愛情ホルモンと言われています。
そのストレス反応が逃走-闘争反応なのか、それ以外の反応であるかが、プラスに働かすかマイナスに働かすかの分かれ目となります。
プラスに働かせるには、性格・思考(マインド)が大きく影響し
・コミットメント(いろんな状況において積極的に自分と関連させる傾向)
・コントロール(出来事に対して、ある一定範囲は自分の力で影響を及ぼすことができると思い行動する傾向)
・チャレンジ(人生は変化するものであると信じ、変化を成長の機会である捉える傾向)
3つの思考が必要だと言われています。
例え話をすると…
A君はとにかく目立つことが好き、注目の的になることが大好き
B君は目立つことも、注目の的になることも好きではない
この二人がそれぞれ大きな大会などで選手宣誓をするようになったとき、ストレス反応は違ってくるということです。
3つの思考を持てるようにするには、やはり育成年代においての成功体験の積み重ねの過程によるかと思います。
その成功体験というものが、ストレスを感じて出来ることに依存してのものなのか、出来ない事にチャレンジして生まれるストレスを感じてのものなか、そのどちらが習慣化されているかというところです。
これは最初の20時間の「苛立ちの壁」を超えることに対しても繋がっていることだと言えます。
「ウチの子はそんなタイプじゃないから…」とか、「まだ子どもだからやってあげないと…」とかが、悪影響を及ぼすことが容易にわかるかと思います。
話は戻りますが、サッカーだけに限らず、何かに取り組むときストレスは必ずあります。
「行きたくない」「やりたくない」と思うことは、どこかで訪れます。
傾向をみるに、何の世界であれ、プロになるまでストレスを感じなかった人は、プロになった後、ストレスを感じ、そのストレスが闘争-闘争反応になることが多いようにも感じます。
ストレスを上手く成長に繋げれるか?お子さんがストレスを感じているとき、どう接するか?
子どもがストレスを感じているとき「しめしめ、成長するタイミングだな」と思える育成環境であればと思います。
こうやって記事にしていみると、スポーツに限らず、習い事とは「ストレスを感じるために習わさせているもの」であると言い換えることができるかと思います。
結果や成果も大切ですが、その過程にあるストレスに目を向けることも、その習い事に意義があるのかどうかの判断基準になるかと思います。
活躍しているから意義があるとは言えない。ストレス(厳密にいうとストレス回復期)がプラスに働いているから意義がある。
まぁストレスがプラスに働いていれば少なからずその環境下では活躍もするでしょうけどね…。